推し過ぎた悲劇のラスボスと、同化しちゃった!
 ページ数や時間の関係でエピソードを端折らざるを得ないコミカライズやアニメならいざ知らず、十巻にも渡る小説にも名前が出てこないキャラクターがヒロインのアドラシアンにまとわりついてるなんて、絶対におかしいもん。

「あ。はい。そうですけど。とりあえず、私の手紙を返して貰って良いですか? 私宛のディミトリ・リズウィンの手紙も、同様に返して下さい」

 冷静に手を差し出した私に、スティーブは嫌な表情をした。

「うわー……転生しているから、作中のシンシアとキャラクターが全然違うとは思ってたけど……お前、最高に真逆で違和感しかないわ」

 スティーブは嫌な表情をして言ったので、私はすごく不思議だった。何言ってるんだろう、この人。

「何言ってるの……? シンシア・ラザルス……っていうか、私は一巻序盤にしか出てこないでしょう? しかも、名前だけ出てくるお葬式で」

 私がそう言うと、彼も不思議そうな顔をした。二人同じように「何言ってんの、こいつ」みたいな顔で、見つめ合っている。

「……あ。もしかして、あんた。前世で、外伝が出る前に死んだ?」

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