推し過ぎた悲劇のラスボスと、同化しちゃった!
 長い髪を乱暴に掴まれて、私の足は宙に浮き出してた。頭も痛いけどこのままだと私、アドラシアンとエルヴィンの狂信者に殺されてしまう……。

「当たり前だろ。あの人は、唯一の友人シンシア・ラザルスを喪ってからようやく彼女を異性として好きだったことに気がつくんだ。そして、彼女を生き返らせるために、その世界をも滅ぼすことに決めた」

「もうっ!!! もし世界滅んだら、あんたも……アドラシアンやエルヴィンだって、死んじゃうんだけど!? わかってないんじゃない!!」

 私は今日に限ってディミトリにもヒューにも、ここに来ることを言って来なかったことを後悔した。

 頭部に感じるあまりの痛みで、気が遠くなりそう。

「滅ばないよ。物語の主人公たちって、そういうものだろ? お前。哀しい過去を持つディミトリを守りたいんなら、一番に離れなきゃいけないのはお前だったんじゃねえの?」

 せせら笑うような笑みを見て、私はキッと睨みつけた。

「私の人生に……何の事情も知らないあんたが、偉そうに口を出さないで!」

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