推し過ぎた悲劇のラスボスと、同化しちゃった!
 ジジー……と手に持っている拡声器からは電子音のような音がしているけど、高等部の校舎に放送されているのかはここからはわからない。

 扉を叩いている音は止まないし、スティーブは見るからに力が強そうだからすぐに破られてしまうかもしれない。

「ディミトリ!! ディミトリ……私が死んでも、わかりやすい詐欺に騙されないで!! 優しくて純粋過ぎて、凄く心配なんだよ!! 人を信じるのは大事だけど、信じ過ぎたら駄目だよ!! やだやだやだ!! 純粋過ぎる推しが心配過ぎて……ディミトリを残して死ぬなんて、絶対にいやー!!!!」

 私の悲痛な泣き声がどこかに届いているのか、どうなのか。わからない。こんな小さな……おもちゃのような、拡声器(メガホン)で声が届けられるんだろうか?

「いやだ……いやだっ……死にたくない!! 死にたくないよ!」

 前世ここまで生に執着出来たかというと、そうでもなかった。ただ運命を受け入れようと、それだけを考えていた。

 けど、今はどんなに恥ずかしくてみっともない思いをしたって、私は生きたいって思える。そうだよ。ディミトリとこの先も、生きていくためなら。

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