推し過ぎた悲劇のラスボスと、同化しちゃった!
 長剣を壁へと立てかけて、汗を手で拭っていた。あの様子だと、すぐに戻って来るだろう。

 そして、ディミトリは本当に何気なく、お腹辺りにある服の生地で額の汗を拭った。

 綺麗に割れた腹筋がチラッとだけ見えて、一気に頭に血が上り興奮し過ぎて心臓が止まるかと思った。

 ドクドクドクドクという、体に血が巡る音が聞こえる。

 推しの生腹筋を見た時の乙女の興奮度たるや、何と例えて良いのかわからない。何かの数値では計り知れないほどの興奮振りになってしまっても仕方ない。

「ふっ……ふはっ……嘘!」

 何分か呆然とした後でやっと大きく息をついた私は、ディミトリの腹筋を見れてしまったというとてつもなく衝撃的な出来事から立ち直っていた。

 はーっ……なんて、素敵な造形美。まるで、美しい彫像みたいな鍛えられた腹筋だった。

「はーっ……もうっ。ディミトリってば、有罪確定……あんなに美味しそうな腹筋を見たら、尊死しちゃう……」

「本当に……君は物好きだな。俺の肉は、美味くないと思うが」

 ……は?

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