推し過ぎた悲劇のラスボスと、同化しちゃった!
(嘘! ディミトリ? どうして?)

「いや……こっちが理由を聞きたいんだが、なんでシンシア・ラザルスが俺の頭の中で話しているんだ?」

 ディミトリは戸惑っているのか、眉を顰めたようだった。私も彼の体を動かせないものの、そうした体の感覚は共有している。

 けど、今はそんなことなんて、どうでも良くて。

(……なんで、私の名前を知ってるの?)

「そりゃ……何度もシーンと静かになった中で、自分の名前を呼ばれれば、あれは誰なのかと気になるさ」

(えっ……! ディミトリに私の名前を、覚えて貰えるなんて! もしかして、ここって天国かな?)

 ううん。とても良い夢なのかもしれない。最愛の推しディミトリ・リズウィンが、私のような者の名前を覚えてるんだよ? 本当に信じられない。

「いや……だから、なんでシンシアは俺の頭の中で話してるんだ? 本当に、よく分からない変な感覚だ。俺であって俺でないような、不思議な感覚がする」

 そこで私は、はっと自分が何で廊下を走って彼の元にまで行こうとしていたかをようやく思い出した。

< 33 / 140 >

この作品をシェア

pagetop