推し過ぎた悲劇のラスボスと、同化しちゃった!
 何がなんだかわかんないけど、私は現在ディミトリの体の中に居るらしい。けど、私にとってはとても都合が良いので、この状況を利用するしかない!

(この先……行ったら、駄目です! 出来たら、ドミニオリアに帰ってください!)

「……え? お前。何を、言ってるんだ?」

(良いから! お願い……このまま走ったら、本当に危険なの。お願い。止まって!!)

 私の悲鳴のような声を聞いて、ディミトリは走っていた馬を停止させた。

 彼の後ろから来た多くの馬が、追い越して行く。きっと優秀な彼は馬術にも長けていてクラスでも先頭を走っていたから、皆に追い抜かれたのだ。

 もしかしたら、この授業では良い成績を残せないかもしれない。そして、そこで馬鹿な私は、とあることに気がついた。

 だって、馬術の授業で森を超えた湖に行くんだけど、それってもしかしたら何回もあって、これが彼が怪我してしまう授業であるかもわからないのに。

「一体……何が、あったんだ? そんな声を出すなんて、明らかにおかしい」

 優しいディミトリは自分の中に居る私を落ち着かせようと、そうして宥めるように言ってくれた。

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