推し過ぎた悲劇のラスボスと、同化しちゃった!

07 成功

「……ヒュー?」

 ぼんやりとした視界の中に眼鏡を掛けたヒューの顔が見えて、私は彼の名前を呼んだ。

「あ。起きた? シンシア。廊下を急に走り出して、倒れるなんて……一体、何があったの?」

「っ……! あのっ……! ヒュー。待って。私。ディミトリのところに行かなきゃ……」

 廊下で倒れたままだった私の体は、救護室に運ばれたらしい。慌てて上半身を起こした私を止めるようにして、ヒューは両手を上げた。

「ちょっと待って。落ち着いて。彼ならさっき馬術の授業で怪我人が出たそうで、校舎にまで帰って来ていた。シンシアを探していたけど、君がまだ意識を失っていると言ったら渋々だけど帰って行ったよ」

 あ。やっぱり……あれは、夢ではなかったんだ。私は無事にディミトリのトラウマとなるはずだった、顔の傷を負うのを防ぐことが出来た。

「ディミトリの……顔に、傷はなかった?」

「さっき会った僕が見る限り、彼は君のお気に入りな綺麗な顔のままだったよ。それからは、知らないけど」

「はーっ……そうなんだ。本当に、良かった」

 あきれたようなヒューの言葉を聞いて、私はほっと息をついた。

「シンシア。何かあったか……僕に、話す気はあるの?」

「えっ……えっと……その」

 キランと光った、ヒューの眼鏡の奥の目にたじろいだ。

 これは、まずいまずい。

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