推し過ぎた悲劇のラスボスと、同化しちゃった!

08 切実

 夢まぼろしなんかでもなくて、本当に彼が恥ずかしそうに教室の扉に傍に立って居た。

 私はまさか、ディミトリが私を探して教室に来てくれるなんて思わずに、本当に驚いていた。

 ちなみに彼は迫害された種族ダークエルフの血を引き継いで周囲に遠巻きにされているとは言え、今のところ特段ひどい虐めなんかには遭っていない。だから、話しかけられたら皆だって普通に話すのだ。

 ディミトリは、自分で壁を作っている。それは、彼が悪い訳でもなくて、何もかも彼の悲しい過去の出来事のせいなんだけど。

「シンシア。こっち来て」

 私は手招きをされて、ディミトリの近くまで行った。昨日は座ったままで話したけど、一年上級生だし彼は特に高身長。顔を見上げて話すしかないけど、背の低い私を見下ろす目は高圧的でもなんでもなくて、とっても優しそうだった。

「ディミトリ。良かった。顔に傷が、ついてないのね」

 ほっとして私が息をつくと、彼は自分の顎を触りながら言った。

「……顔? ああ。占いか。君は本当に俺の顔が好きなんだな」

「ええ。好きよ」

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