推し過ぎた悲劇のラスボスと、同化しちゃった!
 いつもように私の調子の良い言いように苦笑したヒューに手を振って、私はこういう時のために空けられている教室まで行って手早く着替え、校庭に向かおうと廊下に出た。

「ディミトリ!」

 なんとそこには私の推しが移動教室の帰りなのか、ブックバンドをした教科書を片手に持って微笑んでいた。

 同じ授業を受けているクラスメイトは、彼を遠巻きにはしているものの、孤高感を漂わせているディミトリを親しげに呼んだ私に驚いているようだ。

「シンシア。これから、魔術実技?」

「うん。今から授業に行くところで……えっ……もう。なんなの。なんだか、移動中も絵になり過ぎて眩しいです」

 彼へと完全に推し開示してからというものの、向かうところ敵なしになってしまった私の言葉に、前世から続く愛に推しは心から駄々漏れるような言葉を聞いて顔を赤くした。正気に戻ろうとするかのように、首を何度か横に振って微笑んだ。

「うん。ああ……シンシアは、俺の顔が好きだったんだった。なんだか、そんな風に女の子に好かれていると思うと、不思議なんだ。俺みたいな人間を好きな女の子が存在するとは、思ってなくて……」

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