推し過ぎた悲劇のラスボスと、同化しちゃった!
「うん。ヒュー……魔法薬担当のエドケリ先生って、確かドニミオリア高等学校の学長の甥だったよね?」

「……そうだけど。何、シンシア。次は年上の教師にでも興味を持ったの?」

 私にとってディミトリは特別な推しなんだけど、ヒューにその理由を説明する訳にはいかない。

 あまり強い感情を見せることのないヒューは若い私が、ディミトリが持つ外見を見て、ろくに話したこともないのに恋に恋していると思っているらしい。

「別に……そういう訳じゃないけど! ……そっか。だから……」

 偶然の事故を何の関係もないディミトリのせいにすることだって、可能だったんだ。エドケリ先生は自分の責任になりたくなかったから、不遇な立場で押し付けやすいディミトリのせいにしたってこと……。

 あんなにも人の役に立ちたいと勉強を頑張っているのに、評価して貰えるはずの教師からもそんな扱いをされて。ディミトリはどんなにか、無念だったことだろう。

「だから? どうしたの。シンシア。君が変わっているのは、前からだけど……最近、本当に不思議なことを言うね。あの……倒れた時からおかしいね?」

 ヒューは何かあるなら話して欲しいと、そう言いたげだった。けど、普通に考えて前世の記憶があって……なんて、信じてもらえるなんて思えない。

「えへへ。そっかな……ヒュー。私、ディミトリと話せるようになって、すごく舞い上がっているんだよ。きっと」


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