推し過ぎた悲劇のラスボスと、同化しちゃった!
「えっ……なんで。シンシアの言葉の意味が良くわからないけど、嫌がってる訳でもないなら。良いか。はい。これ。どうぞ」

 ディミトリは私に向けて、小さな包みを投げた。

「あっ……ありがとうございます! 一生大事にします!」

「え。いや。すぐに食べてよ……焼き菓子だけど、そんなには日持ちしないと思うし」

 え。でも、せっかくディミトリに貰ったのに、もったいない……。

「街に行って、魔術師に保存魔法を掛けて貰えば……」

「……うん。それだと、食べられなくなるよね。そうすると、美味しそうなお菓子をあげた意味がないから俺に返して貰おうか」

「えー! それは嫌! うーん。じゃあ……食べます」

 せっかくお菓子を買ってきてくれたディミトリにそのまま返すのは絶対嫌だった私は、渋々甘いお菓子を食べ始めた。

「これ、おいしい! もう本当に、最高」

 もぐもぐと幸せを感じつつ甘い焼き菓子を食べている私に、ディミトリは微笑んだ。

「それ、最近人気の店の焼き菓子。喜んでもらえて、俺も嬉しい」

 私が美味しいと言ったから、嬉しそうににこにこして笑うディミトリ尊い。え。何これ、もう可愛い。

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