推し過ぎた悲劇のラスボスと、同化しちゃった!

13 頭が良い

(……? あ)

 いつもとは違う高い視点、それに校外に居たはずの私は校舎の中を歩いている。

 また、ディミトリの中に私は居た。慣れない大きな体に、長い手足の感覚。

「……シンシア? どうした? 君も今は授業があるんじゃないか?」

 あ。やっぱり……ディミトリは、魔法薬の授業へと今から向かうところだったらしい。

 間に合った……いや、私の体は全然間に合ってないんだけど、助けられるなら結果オーライってことで。

 しかし、ここにまで来た私は、彼になんて言えば良いのだろう。だって、ディミトリはいつか誰かの役に立ちたいと勉強熱心で真面目で、だからこそ報われない運命に闇堕ちしてしまうはずなんだから。

(ねっ……ねえ、ディミトリ。あのっ……私と一緒に授業サボらない?)

 彼の返事まで一瞬間が空いたので、私はとても緊張した。

 どうするどうする。このまま魔法薬の授業へと向かわれてしまったら、これから起こる事故の内容だってわからないのに回避しようがない。

「シンシアには……この前助けて貰ったから、わかったよ」

(わー! 良かった!)

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