推し過ぎた悲劇のラスボスと、同化しちゃった!

14 意味

「……あ」

 目を開けた私が見上げていたのは、心配そうにこちらを見ているヒューの顔だった。

「シンシア。リズウィンから……聞いたよ。彼の中に入って、危機を先んじて助けていたんだって?」

 ヒューはいつもの淡々とした口調で、そう言った。もう彼は既にディミトリから全部、聞いた後みたいだった。

「……ヒュー。どこまで聞いたの?」

「多分、シンシアが思っていることは全部聞いてるよ。良く当たる占いねえ……あの男は周囲からの情報源などないに等しいという事情も良くわかるが、同情してしまう程に世間知らずだし。それを利用する君も、どうかとは思う」

 私がディミトリが人と関わりがないための情弱っぷりを利用したことに、ヒューは眉を寄せて深い不快感を示した。

「あの……ごめんなさい。これには、ちゃんとした理由があって……」

「どんな理由……?」

 間をおかずに尋ねられて、私はどう言って良いものか悩んだ。けど、ヒューは私をもう逃してくれる気はなさそうだ。

「私……心臓が悪いんだけど、死に近いせいかディミトリの危機がわかるようになったの。それに、ヒューも見ていたように走ったりして発作を起こすと、彼の中に入っていて、二回彼を助けることが出来たわ」

 かなり無理でしかない言い訳だけど、ヒューだって普通ではありえない不可解なことが続いてることは理解しているはずだ。だから、これで納得して貰うしかない。

 ヒューは眉を寄せて、考え込んでいる様子だ。次に何を言われるのか、私は緊張して固唾を飲んだ。

< 69 / 140 >

この作品をシェア

pagetop