推し過ぎた悲劇のラスボスと、同化しちゃった!
「……それは、君だって同じだろう。そもそもディミトリ・リズウィンが誰かと親しく話しているところは、僕は一度も見たこともない」

「た、確かに話した事はないけどっ」

 図星を突かれ、私は慌てた。尊くて無理すぎて近寄れないけど、ヒューのいう通りだもの。

「誤解を招くという理由なら、リズウィン本人だって問題があるんじゃないの。自分の気持ちを何も伝えてくれないのに、そんな奴を誰が望んで理解してくれると言うんだよ」

 国中の頭の良い子を集められた学術都市ドミニオリアでも秀才として名前が知られているヒューに、このままだと完全論破されてしまう。

 期末試験の点数はクラスでも下から数えた方が早い私は、うぐっと言葉に詰まってしまった。

 私がディミトリを好きな理由は、深く深くやんごとなく、数え切れないくらいある。

 周囲から遠巻きにされているディミトリが、自ら進んで親しい人を作ろうとしないのは……幼い頃お母さんを目の前で殺されてしまったという悲しい過去があるから。

 それがトラウマな過去となってしまい自分と関わる人が不幸にならないかと、ディミトリはいつも不安になってしまうから。

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