推し過ぎた悲劇のラスボスと、同化しちゃった!
「はいはい。大事にしてね。君は二年生だよね? ……名前は?」

 これはエルヴィンの希望だから、別に教えても良いと思う。

 何条かに詳しく定められたエルヴィン・シュレジエンの約束事を思い出しながら、私は微笑んだ。

「私は二年生のシンシア・ラザルスです。シュレジエン先輩のファンではあります。ですが、あなたに変な要求をしたり行動を縛るような恋人になりたいという訳ではないので、どうかご安心ください」

「……え。ごめん。なんか、自己紹介の時点で僕は振られた気がするんだけど……いや、まあ……良いか。ちょうど良いから、一緒に帰ろう」

「え? けど、シュレジエン先輩、さっき校舎へ向かってましたよね?」

 学校から帰るための私とすれ違うということは、そういうことだ。

「いや、花束にちょうど良い花瓶とかコップあったら持って帰ろうと思っていたんだ。僕の寮の部屋は何もないから。シンシアの部屋は、大丈夫?」

 自分であげたものの花瓶がないと困るだろうと思った様子のエルヴィンは、小説の通りに人格だって優れているみたい。

「あ。はい。メイドが一人居ますので、頼んでみます」

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