推し過ぎた悲劇のラスボスと、同化しちゃった!
「もしかして……ラザルスって、ラザルス伯爵家か。そういえば、一人娘が居るって聞いてたね。それが、君だったのか」

 裕福な貴族の娘が完全寮制で自由の少ないドミニオリアに通っていることは珍しいので、私のことを知っていたようだ。

 とは言っても、彼だって王家の血を引く世が世なら王子様という、ヒーローっぽいヒーロー。

「はい。私です。ふふ……シュレジエン先輩にこうして認識されていると思うと、なんだか、変な気持ちになります」

 私たちは二人で楽しく喋りながら、校門への道を歩いた。小説の登場人物と話しているなんて……彼の深い事情を知っているので、なんだか変な気持ちにはなった。

「認識って何それ。名前と顔が一致したら、認識なの?」

「ふふ。先輩みたいな人に、顔を覚えてもらえるなんて、とても光栄で……」

 私はその時に信じられない光景を見て、目を疑った。

 道に迷ったらしいアドラシアンを親切に案内しているのは……悲劇のラスボスになるはずのディミトリだったから。
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