推し過ぎた悲劇のラスボスと、同化しちゃった!
 私は学年が違うし、彼ら三人の様子を伺うことは出来ないけど……きっと、そうだと思う。

 ディミトリはもう、これからの彼の人生を恋で狂わせてしまうアドラシアンに出会ってしまった。

 この世界に転生してから、時間が進むのが……早い。だって、私のお葬式のシーンまで、もう少しなのに。

 私にはもう少しの時間しか、残されていない。

「あのっ……シュレジエン先輩より、格好良かったです。絶対にディミトリファン増えたと思う!」

「……エルヴィン・シュレジエンより、俺が? そんな訳あるはずない。けど……シンシアは、そう思うの?」

 隣に座って水筒を持っていたディミトリは確認するように聞いたので、私は力強く頷いた。

「シュレジエン先輩が、ドミニオリアでモテモテなのは、間違いない事実ですけど……私の好みの顔は、ディミトリです! 私。顔面至上主義なので」

 私が彼の黒い瞳をまっすぐに見つめながらキッパリとそう言えば、ディミトリは何故か顔を赤くした。

「……そ、そうか。何だか、勘違いしそうになるな……」

「何がですか?」

「シンシアは……俺の顔が、好きなんだろう? 顔だけが」

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