推し過ぎた悲劇のラスボスと、同化しちゃった!
 いつになく妙な態度のディミトリに、私は彼はアドラシアンと会ったことを話したいのかもしれないと思った。

 だから、エルヴィンには負けたくないのだと。

「……この前、シンシアは廊下でエルヴィン・シュレジエンと話してなかったか?」

 エルヴィンは幼い頃から愛された者特有の人懐っこさで、花束をねだった私を学内で見かければ、声を掛けてくれるようになっていた。

 とはいえ、私の目的はエルヴィンとアドラシアンの出会いを邪魔したかっただけなんだけど。

「シュレジエン先輩は、この前に偶然存在を認識して頂きまして……えっと……ディミトリ。これは絶対に内緒にして欲しいんですけど……シュレジエン先輩って実は、女子内では不可侵条約が結ばれているんです」

 私は周囲に誰も居ないとわかりつつ、周りを見回し声を落とした。消されてしまうかもしれない。

「シュレジエンが? どういうことだ?」

 これは女子の中で極秘事項なので、ただでさえ周囲から遠巻きにされているディミトリは絶対に知らないはずだ。

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