推し過ぎた悲劇のラスボスと、同化しちゃった!
 横たわっている私の手を握っていたのは、仲良しのヒューにとてもよく似た天使のようだった。親しみのある天使さまなら、天国でも機嫌良く過ごせるのかもしれない。

「残念ながらって、言って良いのかわからないけど……シンシア。ここは天国じゃないよ」

「え……?」

 私は聞き慣れた声のヒューの言葉を聞いて、信じられない思いでいっぱいだった。

 だって、あの息苦しさと胸の痛み。あれは、どう考えてもすぐに回復するような生やさしいものではなかった。

「……シンシア。君がリズウィンの意識の中に同化が出来たのは、その胸の痛みにも関係している」

 頭の良いヒューらしい淡々とした口調で、彼は私の胸の痛みの正体を教えてくれるようだった。

 確かに胸の痛みが我慢し切れないくらいの時に、私は二度もディミトリと同化して彼のピンチを救っていた。

「え。私が……どういうことなの?」

「リズウィンには……ダークエルフの血が流れていることは、知っているよね?」

「え。ええ。もちろんよ。だから、ディミトリは……いわれもない差別を、幼い頃から受けていて……」

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