推し過ぎた悲劇のラスボスと、同化しちゃった!
「うん。本当にギリギリだったけどね。僕もダメ元だったよ……古い文書に、そういう症状のある人を救う方法が書いてあった。世界樹に頼む方法は、とにかくやってみるしかないと思ったけど……本当に良かった」

 顔を見ればヒューも、目が赤かった。もしかしたら、私が目を覚ます前に彼は嬉しくて泣いていたのかもしれない。

「ありがとう……ヒュー」

「良いんだ。僕の一人しか居ない友人が居なくならなくて、良かったよ……あ。シンシア。君にはあまり言いたくないんだけど、いずれは知ることになるから、先に言っておく」

「え? 何……?」

 慎重に話し始めたヒューに、私は眉を寄せて身構えてしまった。こういう始まりって、どう考えても嫌な話に思えるんだもの。

「シンシアの両親が……僕と同じように付き添っていたリズウィンに、娘にはもう関わらないでくれと頼んでいた。彼は悲しそうだったが、口答えすることもなくわかりましたと去って行った……エルフの血を引く彼も、世界樹に呼びかけてくれた一人なんだ。必死に呼びかけていて……辛かったと思う」

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