推し過ぎた悲劇のラスボスと、同化しちゃった!
 これは心からの疑問だったんだけど、アドラシアンは悲しそうな表情で俯いた。なんだか、何の罪もない可愛い小動物をいじめているような気持ちになって、嫌な気分だった。

 現実世界を知っている人間から言わせてもらうと、ファンタジー世界のヒロインアドラシアンは、あまりに正しく揺るぎなく眩しすぎる。

「ディミトリは……最近、本当に落ち込んでいるの。私が理由を聞いても話してくれないんだけど、噂で聞いたわ。貴方の両親が、娘の命を救った彼を罵倒した件をね」

「そっ……それは、知ってます! けど、私はそれを謝りたくて……」

 だからこそ、ディミトリに謝るために探しにここまで来たのに、それすらも許して貰えないの?

「どう謝るの? ディミトリに貴女が近づけば、きっと彼はご両親の言葉を思い出すはず。真面目な性格だから、貴女の両親に言われた言葉を守りたいと思うはずよ……けど、貴女はディミトリのことを好きなんでしょう? 彼に聞いたわ。貴女は彼の顔が好きなだけなんだって」

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