推し過ぎた悲劇のラスボスと、同化しちゃった!
 眉を寄せた美少女の不快そうな表情は、迫力があった。好意を寄せる異性に近づく同性に向ける、明らかな敵意。アドラシアンは、同担拒否するみたい。

 確か前世でも、推し被りを死ぬほど嫌がる人が居た。

 あ。そうか……私、あの時にエルヴィンとアドラシアンの出会いを邪魔したから? もしかしたら、あの後にディミトリと彼女は親しくなって……そうよ。

 私が念のためにと入院している二週間の間に、何があったかなんてわからない。もしかしたら、信じられないくらいの速度で二人の仲は深まっているのかもしれない。

 けど、私の心の中には「早くディミトリに会って、謝って説明したい」と言う気持ちで溢れていた。何も悪くない彼を傷つけたことを、少しでも謝罪したくて。

「待ってください! それは……」

「ディミトリには、近づかないでくれないかしら。貴女と居るより、私の方が彼の力になれると思うの……だって、私の方が正論を押し通すことが出来るもの」

 余裕ある笑みで、にっこりと微笑んだアドラシアン。

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