推し過ぎた悲劇のラスボスと、同化しちゃった!
 推しだしファンだし彼の幸せを祈るのは当たり前のことだと、そんな軽い言葉で自分の気持ちをずっと誤魔化していたことに気がついてしまったのだ。

 もしかしたら、ディミトリがまだ二次元に居たなら……ううん。まだ直接話したこともなかったら、彼のことを神聖なる推しにはいつも幸せでいて欲しいと、何も求めない良い子ちゃんでいられたと思う。

 けど、実際に会ってそんなこと思えない! 無理! だって、私は転生したことがあると言えど、単なる一般人だし! 好きな人をポッと出の他の女に取られそうで、不愉快にならないなんて無理。

 だから、私は密かにディミトリを呼び出すことにした。色んな事情を知っているヒューに言えばディミトリと会うことはきっと反対されるし、適当な誰かなら途中でアドラシアンに邪魔されるかも。

 だから、私はちょうど良い人材を彼に向かわせることにした。

 こういう時に絶対に間違いのない、清く正しいヒーローエルヴィン・シュレジエン先輩である。彼の誠実で温厚な性格などは前世で履修しているので、絶対に裏切ることのない完璧な人選。

「……シンシア。俺を呼び出すなんて、どうしたんだ?」

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