育児に奮闘していたら、イケメン整形外科医とのとろあま生活が始まりました
詳しいことは、妃織には話していない。
ただ「大切なお仕事でアメリカと言う外国へ行かなければいけないの」と伝えてるだけだ。

それなのに「エイに乗ればアメリカに行けるかもしれない」だなんて……まさか、2歳児の口からそんな言葉が出てくるなんて思ってもいなかった。

あり得ないことだとわかっているはずなのに、鼻の奥がツンと痛くなってくる。
やっぱり、妃織も寂しいのかもしれない……。


「妃織、パパのところへ来てくれるのか?」

「うん! でも、がいこくは、とおいでしょ? だからこれにのるの」


妃織の指差す先には、先ほどのエイがいる。
必死で涙を堪えながら、私は妃織のことをぎゅっと抱きしめた。


「妃織……ママも、一緒に行こうかな?」

「ダメだよ。エイさん、おもいってないちゃう」

「あはは! ママはダメなのかぁ」


笑いながら左腕だけで妃織のことを抱きかかえると、空いている方の右手で私の左手を優しく包み込んでくれる晃洋さん。
私が泣いてしまいそうなのをわかってなのか、その場を離れてイルカが泳いでいる場所へと足を進めていく。

本音は、ついて行きたい。
けれど、晃洋さんは仕事でアメリカへ行くのだ。

まだ幼い妃織を連れての海外生活は慣れるのに時間がかかるだろうし、妃織にとってもストレスになる。
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