育児に奮闘していたら、イケメン整形外科医とのとろあま生活が始まりました
明かに不安を隠しきれていない母親だったけれど、この手術は妃織ちゃんのためでもあるし、ギプス固定では到底無理だ。
仮にギプス固定を継続し仮骨形成が見られたとしても、変形治癒してしまう可能性が高い。そうなれば歩行にも支障が出てくるだろうし、手術をするのなら早い方がいい。

採血と胸部レントゲンのオーダーを入力して、ナースに検査案内を依頼した。検査結果がすべて揃うまでの間、発熱で来ていた68歳男性患者の診察をする。

1時間程度で「採血結果が出ました」とナースから報告を受け、先ほどの親子を診察室に呼び入れた。


「採血も胸のレントゲンも異常ありません。このあと手術の予定を決めていきますので、また明日改めて整形外来を受診してもらえますか?」

「はい……わかりました。入院は、長くなりますか?」

「子どもですからね、長期の入院は不要です。術後、ある程度歩行が可能となれば、退院していただいて構いませんよ」

「……そうですか。わかりました。妃織のこと、お願いします」


腰を折って深々とお辞儀をしている母親。きっと、不安で胸が張り裂けそうに違いない。

先ほどナースがデータベースを確認したところシングルマザーということが判明し、より一層全力を尽くし、母親の不安を消していかなければならないと思った。
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