育児に奮闘していたら、イケメン整形外科医とのとろあま生活が始まりました
久しぶりに男性から下の名前で呼ばれ、初めはくすぐったかったものの今ではすっかり慣れてしまって心地くらいだ。


「それでは、また。妃織ちゃん、またお昼ご飯食べてから会おうね」

「せんせい、おしごとがんばって!!」


ぶんぶんと右手を振りながら、妃織は外来に行く山内先生を見送る。
振り返って、笑顔で手をひらひらさせている山内先生に向かって、私は軽くお辞儀をした。

山内先生は、私と妃織に対して本当に優しい。
山内先生からしてみれば、この優しさは仕事の一環なのかもしれない。でも、この2週間山内先生の優しさに触れ、助けらてきたことがたくさんある。

今まで男性の優しさに触れたことは少なかったけれど、山内先生と話をしていると心があたたかくなる。
まぁ……処置は苦手だけどね。


「ママー、これよんで」

「え? あ、はいはい。わかったよ」


妃織に話しかけられて、ハッと我に返る私。

ダメダメ。山内先生は、みんなに対して優しいんだから。
そんなことを思いながら、さっき沸いてきた感情を抑え込んで絵本を読み始めた。


* * *

「では、ギプスカットを始めますね」


昼食後、ギプスカットの道具を持った看護師さんと山内先生が再び病室を訪れる。

やっと解放されるのかぁ……と思ったのも束の間。山内先生が持っているギプスカッターを見て、ギョッとした。
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