育児に奮闘していたら、イケメン整形外科医とのとろあま生活が始まりました
妃織を妊娠しているとわかったときーー。
あの時の、海斗の冷たい言葉と視線が、2年の月日が経った今も忘れることができない。

それ以降男性と関わるのが怖くなって、1人で妃織を育てていくと決めた。だから今ここで簡単に返事をして、妃織が傷つくことが1番怖い。

あとになって『やっぱり妃織を一緒に育てるのは無理だ』と言われてしまったら、取り返しがつかないからだ。
今の時点で傷つくのは、私だけでいい。


「美優、すぐに返事をくれとは言わない。焦らなくていいから」


私の気持ちを汲み取ってくれたのか、山内先生は私の肩にそっと触れてそう言ってくれた。
そうだね。妃織とも話して、少し考えたいかも。

妃織は山内先生に対して恐怖心は抱いていないようだったけれど、それはあくまでも〝病院の先生〟として見ているからであって、父親としては見ていない。妃織くらいの年齢だったら、自分のお気に入りのおもちゃや絵本を渡されれば懐くのは当然のこだ。


「すぐにお返事できなくてごめんなさい」

「いや、妃織ちゃんのこともあるから当然だ。ゆっくりでいい。でも、困ったときは頼って欲しい。それだけは約束して欲しいんだ」

「……わかりました」


山内先生のことだ。私が『わかった』と言うまで説得するに違いないと思った私は、山内先生のお願いを素直に聞き入れることにした。
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