育児に奮闘していたら、イケメン整形外科医とのとろあま生活が始まりました
それから間もなくして妃織の退院が決まり、私は荷物をまとめている。荷物……といっても、着替えなどは両親が合間を見て持って帰ってくれたおかげで、妃織の絵本やお気に入りの人形がほとんどなんだけれど。

7月に入院したのにカレンダーはもう9月になっていて、約2ヶ月もの期間病院に入院していただなんて実感が湧かない。


「妃織、今日ばぁばのお家帰るよ」

「え! ばぁばのいえにかえれるの?」


相変わらずベッドの上で絵本を読んでいた妃織だったけれど、帰れると聞いて、瞳をキラキラと輝かせ始める。
そうだよね。帰りたかったに決まっているよね。

山内先生も岩田先生も看護師さんもみんな親切に対応してくれたけれど、やっぱり家に帰りたい気持ちは変わっていなかったのだと、改めて思い知らされた。
ある程度荷物をまとめ、あとは両親の迎えを待つだけ……。と、ベッドに腰かけたとき。


「間に合った」


病室に現れたのは、山内先生。退院時間は10時だというのにも関わらず来てくれたということは、きっと外来の合間に来てくれたのであろう。


「妃織ちゃん、退院おめでとう。今日からお家だけれど、困ったことがあればすぐにおいで」

「うん! くるよ!!」


元気よく返事をした妃織だったけれど、それが私に向けての言葉であることもすぐにわかった。
子どもを通してそんな風に言うなんて、ちょっとずるい。
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