育児に奮闘していたら、イケメン整形外科医とのとろあま生活が始まりました
両親に気を遣っているわけではないけれど、日中付きっ切りな分、帰宅後は私が面倒をみなければ……と思っている。
当然、自分の時間などない。


「そう……でも、困ったら連絡して。すぐ対応するから」

「あ……ありがとうございます」


『連絡して』と言われ、一瞬ドキリとした。
山内先生の連絡先は知っているけれど、退院してからまだ1度もメッセージを送っていないから。

困ったことがないわけではない。退院してまだそんなに時間も経っていないし、どれくらい左足を使ってもいいのか、悩んだこともあった。
でも、そんなことで山内先生の仕事の邪魔をしてはいけないと思い、連絡するのを躊躇ったのだ。

山内先生はお忙しいのだから、私なんかの相手をしている時間などない。そんな時間があるくらいならば、1人でも多くの患者さんの手当や処置に当たって欲しいから。


「ふっ、美優らしいな。しかし、このケーキ本当に美味しい」

「そうなんです! 来月から、サンドウィッチの軽食も販売開始するみたいなんですよ」

「へぇ。それじゃあまた来ないとな。次は、美優が働いているところが見たい」


そう言ってコーヒーを喉へと流し込んだ山内先生は、笑顔で私のことを見つめている。来てくれるのは嬉しいけれど……なんだか仕事ぶりを見られてしまうのは恥ずかしい。
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