育児に奮闘していたら、イケメン整形外科医とのとろあま生活が始まりました
山内先生にそう言われて、顔が赤くなったのがなんとなくわかった。それを隠すかのように、山積みにしてある整形外科の参考書に視線を移してみる。

それにしても、すごい参考書の量。
薄い物から分厚い物まで種類は様々だけれど、初めて目にする参考書ばかりだ。


「気になる?」

「あ、いえ。すごい量の参考書だなぁって」

「もうすぐ学会発表があって、論文書くのに苦戦中。今回、難しい症例についてまとめていてさ」


話しながらも、カタカタとパソコンに文字を打ち込んでいく山内先生の眼差しは真剣そのもの。
『学会発表』と言われあまりピンとこなかったれど、山内先生にとってはとても大切な仕事なのだということがわかった。

私は今回妃織の骨折手術で医療に触れたけれど、それは多分ほんの一部でしかない。テレビで放送されていても専門的な医療用語についてはちんぷんかんぷんだった。

ダメだな……もっと、深く勉強しないと。


「美優? 今回の学会発表が成功したらさ、俺とデートしよう」

「はい?」


突然の提案に驚いて、変な声を出してしまった私。
さすがにドクターに対して失礼だったと思い、慌てて口を抑える。

それにしても、いったいどういう話の流れでそうなったのか。医療の話についていけない私とデートしたって、つまらないと思うんだけれど。
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