育児に奮闘していたら、イケメン整形外科医とのとろあま生活が始まりました
「……あ…」


この時は、無意識だったと思う。
ただただ助けて欲しくて、私は気が付けば山内先生に電話を掛けていた。

きっと、山内先生なら助けてくれると思ったからーー。


『はい、もしもし』

「遅くにごめんなさい。美優です……あの、妃織の母です!」


5コールくらいで電話にてくれた山内先生は少し眠そうにしていたけれど、私だとわかるとすぐに声色を変えて『どうした?』と聞き返してくれた。


「妃織の右の太ももが腫れていて、熱があるんです」

『腫れているのはいつから? 熱は高い?』

「さっき測ったら、38.6度でした。いつから腫れているのかはわからなくて……気が付いたのは、20時くらいでした」

『妃織ちゃん、泣いてるな。今から来れそう?』


電話の向こう側で妃織の泣き声を聞き取ってくれた山内先生は、落ち着いた声で病院に来るように促してくれる。

「はい、わかりました……」と小さく返事をして電話を切ると、すぐに出かける準備をする。
バッグに必要な物だけを詰め込み、隣の部屋で口を開けて寝ている母に状況を伝えると、車を発進させた。

山内先生に退院祝いとしてもらったうさぎのぬいぐるみを抱きしめたまま、チャイルドシートでぐったりとしている妃織。
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