育児に奮闘していたら、イケメン整形外科医とのとろあま生活が始まりました
あぁ。私、晃洋さんと同棲するんだ。明日から、ここへ帰って来ることはなくなるんだ。

そう思った瞬間寂しさが込み上げてきて、鼻の奥がツンと痛くなってくる。


「お父さん、お母さん、今日までありがとう」


震える声でやっと伝えられた、両親に対する感謝の気持ち。

独りぼっちになって妃織を産むと決めたとき、それを受け入れてくれた両親。辛かったときも1番に支えてくれて、妃織もここまで大きくなった。

私1人では絶対に無理だったことも、両親がいてくれたからーー。


「明日から、頑張るのよ。いつでも帰って来ていいから」

「うん、本当にありがとう」

「さ、バウムクーヘンいただきましょうよ」


泣きそうになっている私を見兼ねた母も、バウムクーヘンにフォークを通す。

こんなあたたかい両親に育てられた私と妃織は、本当に幸せ者だ。
そんなことを思いながら、私もバウムクーヘンに手をつけた。


* * *

「はぁ……緊張した」


マンションへ帰宅して、ソファに座ってネクタイを緩めている晃洋さん。
ガラステーブルの上にコーヒーを出すと「ありがとう」と言って、さっそくカップに口を付ける。

そんな晃洋さんを見つめてから、私もソファに腰かけた。


「全然緊張しているようには見えなかったです。それに……」
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