束の間を超えて ~片想いする同僚兼友人に、片想いをした~ 【番外編追加済】
 ご飯が炊きあがり、あとはメインの豚の生姜焼きを焼くだけというところで玄関から鍵の開く音が聞こえてきた。洋輔が帰ってきたようだ。

 彩子は玄関まで迎えにいった。


「おかえりー」
「……」

 彩子が来ることを忘れていたのだろうか。洋輔は黙ったままじっとこちらを見てくる。

「洋輔?」
「……今のやばい」
「ん?」

 洋輔のつぶやきは小さくて彩子には聞こえなかった。

「ごめん、もう一回。ただいま」
「おかえり?」
「はあ……」

 洋輔は片手で顔を覆うと大きくため息をついた。

「え、何?」
「ごめん、今噛みしめてる」
「ん?」
「彩子のおかえりでグっときた」
「……えぇ? 何それ」
「ああ、もう……」

 どうやら彩子が「おかえり」と言ったことに対して喜んでいるようだ。そんな反応をされれば彩子だって気分がいい。

「あはは。そんなにおかえりが嬉しかった?」

 洋輔は一言「うん」と頷いたかと思うと靴を脱いで上がり、そのまま彩子に抱きついてきた。

「え!? うわっ何?」
「幸せすぎておかしくなりそう」

 そこまで喜ぶとは思わなかった。

 こんなふうに感情あらわに喜ぶ姿を見れば、愛しさが募ってくる。彩子もそっと抱きしめ返した。
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