束の間を超えて ~片想いする同僚兼友人に、片想いをした~ 【番外編追加済】
 自分のデスクに戻った彩子はすぐさま青木にメッセージを送った。

『突然ごめん、青木くん。私の勘違いだったら申し訳ないんだけど、今日松藤に何か大事な話したんじゃない? 松藤が大丈夫かどうかだけでいいから教えてくれるかな?』

 勘違いならそれでいい。適当にごまかせば青木はいちいち突っ込んではこないだろう。彩子は祈るような気持ちで青木からの返信を待った。

 その返信は思ったよりもすぐだった。

『ごめん、折戸さん。今日は洋輔のそばにいてやってくれない? ごめん』
『わかった』

 詳しいことは何も書かれていないが、やはり彩子の感は正しかったようだ。

 でなければこんな返答はこない。


 今、洋輔がどんな想いでいるかと思うと胸が押しつぶされそうになった。

 いったいどれほどの苦しみを抱えているのだろう。きっと彼はそれを一人で抱え込むつもりに違いない。

 だが彩子はそんなことをさせるつもりなど毛頭なかった。洋輔の傷ついた姿を見れば、彩子だって傷つくことはわかっている。それでも今彼を救えるのはきっと彩子しかいないのだ。


 彩子は今日は何が何でも洋輔のそばにいようと決めた。今日は月曜だが、今は洋輔との約束を守っている場合ではないだろう。彼のそばにいてやりたい。

 幸い鍵をもらっているから洋輔の家で待っていられる。まさか合鍵を持っていることがこんなふうに役立つとは思わなかった。
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