束の間を超えて ~片想いする同僚兼友人に、片想いをした~ 【番外編追加済】
「彩子!?」
「ねぇ、なんかあったでしょ。これでもそれなりに洋輔のそばにいるから、そのくらいわかるよ」
「……」

 何も言わないのが肯定している証だ。

「泣きたいなら私の胸貸すよ?」
「大丈夫……」
「だいじょばない」

 彩子は洋輔の肩を引いて仰向けにすると彩子の下に組み敷いた。

「何か知らないけど、つらいなら泣けばいいじゃん」

 洋輔は眉間に皺を寄せて彩子を見つめている。彩子は洋輔の腰と頭に手を回して抱きしめた。

「……っ!」

 洋輔は一瞬彩子を抱きしめ返したかと思うと、すぐにその身体を反転させて反対に彩子を組み敷いた。洋輔は今にも泣きだしそうな顔をしている。

 彩子がすべて知っていることを洋輔は知らないのだ。その感情をどうやってぶつけたらいいのかわからないのだろう。

 彩子はそっと洋輔の頬に手を伸ばし微笑んでみせた。

「……する?」
「っ……今はっ……」

 彩子は、全部自分にぶつけろ、すべて受け止めてやるから、そう伝えるように洋輔に強く口づけた。
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