束の間を超えて ~片想いする同僚兼友人に、片想いをした~ 【番外編追加済】
「うっ、身体いったー……え!? 何これやばっ。あっはは! もうどんだけハッスルしたのさ」

 彩子はとびっきりの明るい声を出した。洋輔は驚いた顔をしている。

「ちょっと、洋輔? 誰のせいでこうなってると思ってんの? ちょっとは労わってよ」
「……ごめん」

 洋輔は申し訳なさそうな顔をしてうなだれた。

「ねえ、恥ずかしいから、それ、その布団取って。私今動けないんだって」
「あ、はい」

 洋輔は言われるがままに、床に落ちていた掛け布団を拾って彩子に渡した。

「ねえ、大丈夫? ぼーっとしてるけど」
「……」

 洋輔は困惑した表情で彩子のことをじーっと見ている。予想外の彩子の態度に戸惑っているのだろう。

 彩子はこれなら大丈夫だと思った。きっと最悪の決断はしないはずだ。

「え、何、昨日そんなによかった? 噛みしめちゃってるの? ……あ、これ無理だ……自分がはずいわ。はっず。私にいい女は無理だ」

 冗談で言ったそれが本当に恥ずかしくて彩子は自分の顔を手で覆った。

「……」

 全然反応が返ってこないので指の間から洋輔を見やれば、随分と呆けた顔をしている。

「ちょっといい加減、何か言ってよ。私一人で恥ずかしいじゃんか」
「……彩子!」

 洋輔が思いきり彩子を抱きしめてきた。ただでさえ悲鳴を上げている身体にそれはひどい仕打ちだ。

「うわっ。ちょっ、だから痛いんだって。ギブギブ」
「あっ、ごめん!」

 洋輔は慌てて身体を離して、心配そうに彩子を見つめたあと、なぜかもう一度強く抱きしめてきた。

「ははっ。あはははっ。彩子!」

 彩子は身体が痛くてしかたなかったが、笑い声を上げる洋輔に心の底から安堵した。
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