束の間を超えて ~片想いする同僚兼友人に、片想いをした~ 【番外編追加済】
「身体そのままだと気持ち悪いでしょ? 時間あるしお湯つかる? お風呂沸かすよ?」
「ううん、シャワーで大丈夫だよ」
「わかった」

 そう言うや否や洋輔は彩子が羽織っていた布団をはぎ取り、彩子を抱き上げてしまった。

「え!? ちょっと何!?」
「動くのつらいでしょ? 風呂場まで連れてく」
「いや、確かにつらいけど。これは無理! 恥ずかしいから! 下ろして!」
「労わってって言ったのは彩子だよ? 大人しくしてて」

 彩子の抵抗もむなしくそのまま風呂場まで連行されてしまった。

「なんで一緒に入ってるの……」
「うん? そこ座って?」
「ねえ、なんでって」
「今日は彩子を甘やかすって決めたから。大人しく甘やかされてて」
「ねえ、本当に無理。やだ、恥ずかしい」
「大丈夫。俺しか見てないから」
「そういう問題じゃない。やだやだ、本当に恥ずかしいんだってば!」
「危ないからじっとしてて」

 彩子の抵抗もむなしくしっかりと身体を洗われ、さらにはタオルで丁寧に身体を拭かれてしまった。

 彩子はあまりの恥ずかしさに穴があったら入りたい気分だ。

 あまつさえ彩子の着替えまで手伝おうとする洋輔に、必死の抵抗をして、それだけはなんとか拒否した。

「朝ごはんの準備してるから、ゆっくり着替えておいで」

 洋輔はそう言い残して脱衣所を出ていった。

 洋輔の豹変ぶりに彩子はもうパニック寸前だ。彩子はその場にうずくまり、跳ね上がった心臓を落ち着けようと胸に手を当てて深く息を吐いた。
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