束の間を超えて ~片想いする同僚兼友人に、片想いをした~ 【番外編追加済】
「はぁ……ははっ」
「何? どうしたの?」
「うん、ちょっと思い返してた。最初に彩子に付きあうかって言われたときは、こんなふうになるとは思いもしなかったなって」
「そう?」
「うん。まあ彩子がいいやつなのは最初からわかってたし、彩子といるのは楽しいだろうなってのは疑わなかったよ?」
「うん」
「でも楽しいだけじゃなくて、想像してたよりも、ずっと、ずっと幸せなんだよ。俺こんなに幸せなの初めて」
「……うん」
「彩子は?」
「私も幸せだよ? 洋輔の隣にずっといたい」

 それは彩子の本音だった。

 本当に言いたいことは他にあるがそれは口にできないのだから、せめてこのくらいは許してほしいと思った。

「……うん、ずっといて。ずっとずっとそばにいてほしい……」
「うん」

 彩子はそのずっとが永遠であればいいのにと思った。

 本当はそのずっとが続かないことはわかっている。最初から束の間の恋人でしかないと知っている。

 この先、小谷とどうこうなることはさすがにないだろうが、いつかまた好きになれる人は現れるだろう。今度こそは報われてほしい。


 そして叶うならば、その相手が自分であればいい。

 彩子はその願いをそっと自分の胸にしまい込んだ。そして一分でも一秒でも長く洋輔といたいと強く願った。



「彩子のことが本当に大事なんだよ。彩子のことこれからも大切にするから」


 それは洋輔からの最大級の愛の言葉だった。

 彩子は涙がこぼれ落ちそうで、そっと瞳を閉じた。



「もう寝ようか。おやすみ」

 洋輔は彩子の瞼にそっとキスをした。
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