束の間を超えて ~片想いする同僚兼友人に、片想いをした~ 【番外編追加済】
 つらい失恋をした洋輔のことを想えば、日本を離れるのはいいことなのかもしれない。距離を置けば癒されることもあるだろう。もしかしたら向こうで新たな出会いだってあるかもしれない。

 何より洋輔は海外に関わる仕事を望んでいたから、今後のキャリアを考えるなら、これは喜ばしいことだ。快く送り出してやるべきなのだろう。


 だから彩子は洋輔から告げられたとき、必死に取り繕って「よかったね」と「頑張ってね、応援してる」と伝えたのだ。

 口が裂けても淋しいだなんて言えなかった。


 そんな彩子に洋輔は出向の詳細を淡々と告げてきた。

 洋輔から聞いた話によれば、出向の期間は一年で、一ヶ月後には日本を発つということだった。一年後にはまた元の部署に戻ってくるらしい。すでに向こうの住宅は決まっていて、出発の準備もすでに始めているそうだ。今住んでいる家も近々引き払うという。


 彩子は本当に何も知らされていなかったんだなと思った。

 信頼されていないようで悲しかった。

 もしかしたらこれを理由に別れを告げられるんじゃないかとも思ったが、意外にも洋輔は別れの言葉は言わなかった。
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