束の間を超えて ~片想いする同僚兼友人に、片想いをした~ 【番外編追加済】
 出発の日。彩子は全休を取って洋輔の見送りに来ていた。

「忘れ物はない?」
「うん、大丈夫だよ」
「向こうに着いたら連絡してね」
「うん、連絡する」
「気をつけてね」
「うん。彩子、行ってくるね」
「うん、いってらっしゃい」

 洋輔は彩子の頭を軽く撫でてから微笑んだ。そして彩子に背を向けると保安検査場へと入っていった。



 洋輔はイギリスへと旅立っていった。





 洋輔を見送ったあと、彩子は自宅に戻って初めて声を上げて泣いた。止まらなかった。ずっとずっと我慢していたものが溢れだしてしまった。

 どうしようもなく洋輔が好きだったのだ。彼を深く愛してしまった。彩子はもうどうやって一人で立っていればいいのかわからないくらい、彼にそのすべてを捧げてしまっていた。


 翌日、彩子は泣き腫らした目を何とかするために午前休を取ったが、午後にはいつも通り働いていた。会社員の悲しい性だ。だが今の彩子にはちょうどよかったのかもしれない。好きな仕事をしている時間が彩子を救ってくれたのだから。
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