束の間を超えて ~片想いする同僚兼友人に、片想いをした~ 【番外編追加済】
 心臓が止まるかと思った。

 急に世界から色が消えてしまったようなそんな気分だった。

 彩子はその言葉を素直に受け止められなかった。今さら本当に好きになってくれただなんて思えなかった。


 なぜ今になって洋輔はそんなことを言うのか。あれだけ避けていた言葉のはずなのに。彩子にはいつだって本当の言葉しか紡がないと思っていたのに。

 今までの恋人たちと同じように、仮初の言葉で縛ろうというのか。

 もしかしたら小谷と話をしたことで、また一人になるのがこわくて言いだしたのだろうか。



 彩子は悲しかった。悲しくて悲しくてたまらなかった。

 偽りの愛の言葉をもらっても少しも嬉しくなかった。



 この日を境に、なぜか洋輔は彩子に「好きだ」と言うようになった。

 彩子はその言葉を浴びるうち、眠れなくなっていった。それは洋輔の帰国が近づくにつれてひどくなる。

 直接その言葉を受け取ったときに自分は何を感じるのかと思うとこわくなったのだ。
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