束の間を超えて ~片想いする同僚兼友人に、片想いをした~ 【番外編追加済】
 翌朝は随分と体調がよくなっていた。鏡で自分の顔を見てみれば、少しだけ顔色もよくなったような気がする。


 彩子は時計を見ると洋輔との通話の時間までを逆算した。寝起き姿では会いたくないので、身なりを整える時間が必要だ。

 今日は裕哉がいるし、通話するべきかどうか迷いもしたが、やはり洋輔との時間はどうしても失くしたくなかった。


 彩子は顔を洗うとしっかりとメイクを施した。洋輔は彩子の変化を敏感に察知するから、メイクをしていないと体調不良は簡単にばれてしまう。今日は調子がいいとはいえ、血色はまだ完全には戻っていない。油断は禁物だ。


『彩子、おはよう』
『こんばんは、洋輔』
『そっちは雪降ってるってニュース見たけど大丈夫?』
『うん。この辺は積もらない程度に軽く降っただけだよ。寒いけどね』
『彩子寒がりだもんね』
『ふふっ、うん。でも、洋輔がくれた手袋があるから』
『うん、それでしっかり防寒してね』
『うん』


 そこでドアの向こうから声がかかった。先ほどまで寝ていたはずの裕哉が起きてきたらしい。コンビニに行くと言っている。彩子はわかったと返事をして通話に戻った。


『ごめん』
『……えっと、誰かいるの?』
『うん、弟が来てて』
『あ、なんだ弟か……』

 そこでコンコンっと寝室のドアがノックされた。ドアを開けると弟が覗いてきた。
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