束の間を超えて ～片想いする同僚兼友人に、片想いをした～ 【番外編追加済】

　洋輔は叶わぬ恋をしているのだ。


　彩子の想像が正しいなら、洋輔は友人の恋人に想いを寄せていることになる。あの優しい男にとって、それはどれほど酷な現実だっただろう。もしかしたら青木よりも彩子と過ごすようになったのは、それが原因なのかもしれない。きっと想いを消せなくて苦しんでいるのだ。


　もちろんそれはすべて彩子の憶測にすぎない。だが彩子には妙な確信があった。これまで洋輔と過ごしてきた時間がそうさせているのかもしれない。何よりあのときの洋輔の表情がすべてを物語っている。洋輔を好いている彩子が間違うはずもないのだ。



　彩子は洋輔の心情を想うと苦しくなった。

　洋輔が恋人と長続きしないのも、きっとその恋を捨てられないからだろう。それは想像に難くない。

　洋輔のことだ。恋人がいる間はその人と真摯に向きあっているに違いない。だが一緒にいる時間が長くなれば、洋輔と自身との想いの差に気づくはずだ。本気になってはくれないのだと。洋輔の優しさは彼女たちを苦しめたことだろう。どこまでも洋輔に惚れさせて、そのくせ洋輔は本気にはなってくれないなど、そんなの生き地獄だ。そうして耐えられなくなって洋輔から離れていくに違いない。


　洋輔の恋人は、束の間の恋人にしかなれないのだ。



　そのあとの恵美との会話はほとんど覚えていなかった。それほどの衝撃だった。

　洋輔も彩子も、その想いが報われることは決してないと知ってしまったのだから。


　それから一年、彩子は叶わぬ恋が故に苦しむ洋輔の姿をずっと見てきた。