束の間を超えて ~片想いする同僚兼友人に、片想いをした~ 【番外編追加済】
 だから友人の関係に縋ろうとした。それが大事なのだと。

 けれど彩子は一枚も二枚も上手で、気づけばあっという間に心を掴まれて、洋輔はその言葉に同意してしまっていた。

(やっぱり折戸は面白い。折戸がずっといてくれるのなら、もうそれでいいかもしれないな)

 それは何とも心地いい敗北感だった。



 彩子の話を聞いてみれば、それが実に魅力的なものだとわかった。

 彩子は洋輔に恋してそれを望んだというよりも、ただただ友人みたいな関係で、ずっとそばにいられる存在を求めているにすぎなかった。

 続かない恋人との関係に疲れ果てていた洋輔にとって、それは理想ともいえるものだった。体の関係を求められないのも助かる。何より別の人間に想いを寄せている自分にとって、同じ想いを返さなくていい相手というのがよかった。
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