束の間を超えて ~片想いする同僚兼友人に、片想いをした~ 【番外編追加済】
 帰りの車内、洋輔はキスしたことによる胸の高鳴りとは別に、極度の緊張でその鼓動を速めていた。


 この日はキスをすることのほかに、もう一つ大事な目的があったのだ。

 キスの反応を見て、どうするか決めようと思っていた。もしも拒絶するようなら諦めるつもりだった。でもあの反応なら受け入れてくれるかもしれない。


 だから洋輔は提案したのだ。

 泊まりのデートを。


 ホテルはすでに予約済みだ。拒否されたらされたで、ホテルだけキャンセルして、食事を楽しむつもりだった。

 洋輔にとっては彩子との関係を続けることのほうが大事だったから、無理に進むつもりはなかった。

 だがもしも叶うならそこに踏み込んでみたいと思った。


 返事を待つ間、洋輔は生きた心地がしなかった。受け入れてくれなくても、せめて嫌われたくはなかった。


 今にも吐きそうなほどの緊張感の中、彩子はその提案を随分あっさりと受け入れた。

(……いいんだ。彩子はそこに踏み込ませてくれるんだ……)

 一緒に泊まってとしか言わなかったが、彩子のことだからちゃんと意味はわかっているはずだ。

 だがそのときになるまで、本当に受け入れてくれるのか自信はなかった。
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