束の間を超えて ~片想いする同僚兼友人に、片想いをした~ 【番外編追加済】
 そんな洋輔の切なる求めに、彩子ははっきりと「いいよ」と返してくれた。そこにはどんな洋輔も受け入れてくれるという色があった。

(彩子は全部受け入れてくれる? 本当に求めてもいい?)

 こわくて何度も確かめていれば、彩子は洋輔の緊張を解すように、また予想外なことを言ってみせた。

 またあの優しさで大きく包み込んでくれたのだ。

 あんなにガチガチだったのに、彩子はそれをあっさりと解いてしまう。

(ははっ、彩子は全部お見通しなんだな。きっとわざとおどけてくれた。本当にこの人には敵わない)


 こんな彩子だから先に進みたいと思う。

 自分がどうとかではなくて、ただただ彩子が欲しくなる。もう結果はどうだっていい。上手くできなくてもいい。彩子ならたとえできなくても笑って許してくれる。

(あー……もう、だからこんなにも……こんなにも……触れたくなる)

 これまでのことを考えればそんなに簡単なことではないかもしれない。だが、彩子となら乗り越えられる気がした。
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