束の間を超えて ~片想いする同僚兼友人に、片想いをした~ 【番外編追加済】
 イギリス出向の話をできなかったのもそのせいだ。

 出向の話は彩子と付きあいはじめてすぐのころに打診があった。洋輔にとってはいい話であったし、断る選択肢はまったく頭になかった。

 当時は彩子との関係も友人の延長くらいのものだったし、彩子も応援してくれるだろうと思った。大切な友人と離れるのは淋しいが、一年なら問題ないだろう、などと考えていたのだ。

 彩子には、すぐに話をしてもよかったのだが、せっかく楽しい時間を過ごしているのに水を差すのも気が引けて、彩子への報告は後回しにしていた。


 しかし、彩子に惹かれていくにつれて、それはどんどん言いづらくなってしまった。

 彩子は前の恋人と遠距離が原因で別れているのだ。イギリスに行くと言えば、自分も別れを切りだされるかもしれない。

 初めのうちはそれでも友人関係が続くならかまわないと思ったが、彩子への想いが募れば募るほど、彩子を手放すことなど考えられなくなってしまった。

 そうして結局ギリギリまで言いだせなかったのだ。

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