束の間を超えて ~片想いする同僚兼友人に、片想いをした~ 【番外編追加済】
「ところで、裕哉くん。実はお礼のほかに一つお願いしたいことがあって」
「はい?」
「もうすぐ裕哉くんは帰っちゃうでしょ?」
「あ、はい。そうですね」
「うん。だからね、そのあとは彩子のこと俺に任せてもらえないかな?」

 これが本題だった。やはり彩子を一人にしておくのが心配だった。そばで様子を見たかったのだ。

「松藤さんが姉ちゃんの面倒みてくれるってことですか?」
「うん、そうだよ」
「え、そんな話してないよ」

 彩子には何も話していなかったから驚いている。だが事前に言えば遠慮するのはわかっていたから、あえてこの場で言ったのだ。

「うん、今した」
「さすがにそんな甘えられないって」
「姉ちゃん、そこは甘えなよ。彼氏心配させたらだめだって。松藤さん、よろしくお願いします!」

 この弟はなかなかにできるやつだと洋輔は感心した。裕哉と繋がっておけば、いろいろとうまく運べるだろう。

「ありがとう、裕哉くん。彩子のことは必ず俺が守るから」
「はい……姉ちゃん、やばいね。俺がドキドキしちゃったんだけど」
「もう勘弁して……」

 彩子は顔を両手で覆って俯いている。恥ずかしいのだろう。

 洋輔は照れてる彩子に構いたくなったが、弟の手前、そこはグッと堪えた。
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