束の間を超えて ~片想いする同僚兼友人に、片想いをした~ 【番外編追加済】
 彩子が知っているだなんて考えたこともなかった。

 知っているのは大隆だけのはずだ。自分は誰にも言っていないし、大隆が話すはずもない。どうして知っているのだろうか。

「本当なの?」
「……それ、は……確かに、小谷のことが好きだったのは、本当……」
「それなのに彩子と付きあってるの?」

 先ほど険のある声音だと思ったのは、これが原因だとわかった。それは怒って当然だ。

 彼女は彩子の親友だ。適当なことは言えない。

「……そうだったことは否定しない。でも今は違う!」
「違うって何が?」
「今、俺が好きなのは彩子ただ一人だから」
「……はぁ」

 やはり信じてはくれないようだ。そんな都合のいいこと。だが本当だからそれ以外言いようがない。

「本当だよ、嘘じゃない」
「わかってる。そうだと思ってたから」
「え?」

 坂本は予想外に納得してみせた。
< 194 / 273 >

この作品をシェア

pagetop