束の間を超えて ~片想いする同僚兼友人に、片想いをした~ 【番外編追加済】
「……松藤?」

 彩子は上手く視線を合わせられないようで、問いかけるようにして名を呼んできた。

「どうした? 具合悪い?」
「……立ちくらみ……たぶん、貧血」
「わかった。横になろう」

 洋輔は自身のジャケットを脱いで床に敷くと、ゆっくりとそこへ彩子の身体を横たえた。幸い床にはカーペットが敷かれているから、そこまで痛くはないだろう。

 詳しい対処法はわからないから、スマホで調べて確認する。足を高くしたほうがいいようだから、適当な段ボールを取って、その上に彩子の足を上げた。

「気持ち悪いとかはない?」
「大丈夫」

 二~三分もすれば、彩子はしっかりと目を開けて、洋輔に視線を合わせた。

「ごめん、もう大丈夫」

 起き上がろうとする彩子の背に慌てて手を添えた。

「今日はもう早退しよう?」
「……うーん」
「なんか急ぎの仕事ある?」
「……ううん」
「じゃあ、今日はもう帰って、週末ゆっくり休んで、月曜からまた頑張ろう?」
「……うん」

 彩子が承諾してくれたことに洋輔はほっと息をついた。
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